ドリームプリズン-罪の墓標-



 ――僕はひたすらに走った。夢の中のはずなのに息が荒い。
 一体何を恐れていたんだろうか。それすらも忘れるように暗い道を走る。


 「ようこそ、逃げてきた囚人さん♪」


 装飾過多な猫の仮面を被った少年の声が響く。
 「ここはドリームプリスン。夢の中に逃げてそこに住まおうとする愚か者の楽園であり独房」


 ドリームプリズンは自分の好きな夢、都合のいい夢ばっかり任意で見られる最低の場所。ここに永遠に囚われて死んでいくものもいる。
 僕は思いっきり夢を楽しんだ。欲を満たせる夢なら何でもというほどむさぼっていた。


 「あなた、それで愉しい?」
 夢の空間が破片となり消えていく、綺麗な光の粒子の中に、それよりも綺麗だと感じてしまうほどの可憐な少女がいた。
 「私はもう飽きた。ここから出ていくために手伝いなさい」
 嫌だ、と答えるはずだった。しかし何故だろう、それが音として発せられることはなかった。
 「あなたは気づいている。でも、自分で見つけることが出来ない。それは己の『罪』。ここドリームプリズンは己の罪を他人に発見してもらうことでしか出られない孤独な堅牢」
 自分の罪を自分で探せないような、屑の吹き溜まり。彼女はここをそう定義した。


 「――それは僕に君の罪を見せてくれるということ?」
 この世界で心の底から発した初めての言葉。彼女はその答えに嫋やかに長い髪をたくし上げて言った。
 「合格」


 互いの罪を探すために他人が見ている夢の『裏側』を見る。夢から映される現実を二人はどう捉え見つけていくのか。
 「これはファンタジーじゃない。残酷なまでのリアリティよ」